月刊笑いに生アクセス NO.34 2007/1/31
毎日新聞夕刊掲載 ネット版
松元ヒロ、上目遣いに世相斬り
吉本興業の故・林正之助会長にかわいがられ、ごちそうになるばかりか背広まで作ってもらったことがある東京からやってきた芸人はそうそうはいまい。
その3人編成のコミックバンド「笑パーティー」に属していたころから幾星霜、ザ・ニュースペーパーを経て、松元ヒロはいまや一人パフォーマーとしてライブに生きる。
パントマイマー、漫談家、コメディアン、どれも正確に松元ヒロを言い当ててはいない。
人情話からオブラートにくるんだ世相斬りへ、汗が尽きるまでスポーツ選手のように走りきる。
まず、おもいっきり下手から出て客を油断させ、深いところへ斬り込んでいく。
なにを正しいとするか、それが決まったとしてどう表現するか、さらにいつ誰に? 綱渡りが続く。
視点、表現、そしてタイミング、場の4つがドンピシャリだったのは、9.11同時多発テロ事件後、全米がブッシュを先頭に正義の報復で沸き立っている時期、落語会にやってきた普通のお客さんを相手に、松元ヒロは、一言も発することなくただ黙ってチャップリン映画「独裁者」の演説にも似たしぐさで報復に燃える大統領を模した。いや、私がそう早合点しただけだったのかもしれない。
このとき、私の体に戦慄が走った。
拍手と笑いから察するに私と同じに受け取った人は会場ではちらほら。
でも、だからいい。
万人に受ける大人の笑いなど、この時代にはどだい無理なのだから。そんな諦念をふまえて、だからこそ時代の危うさを笑いに昇華しようとする松元ヒロの勇気と工夫に心意気を感じた。
こんなDMが届いた。「教育基本法が変わろうが、私の基本は変わりません。政府が過去に向かっても、私は未来に進みます。「美しい国」よりも失敗ばかりの醜い私を愛します。松坂は60億円でこの国を出るけれど、私はこの国を出られません。松坂と松元、一字違いで大違い。今年も私はこの日本で頑張ります・・頑張れば頑張るほど人に笑われるこの商売で。今年もこんな私を笑ってやってください・・・お金を出して。」
■一人パフォーマー花盛り■
「彩の国落語大賞受賞者の会」2/23 彩の国さいたま芸術劇場 三遊亭遊雀、三笑亭夢之助、柳家喬太郎、048-858-5511彩の国さいたま芸術劇場
「松元ヒロソロライブ」3/13〜18 新大久保・アールズアートコート 03-3204-9933東京労音 |