月刊笑いに生アクセス NO.43 2007/11/28
毎日新聞夕刊掲載 ネット版
新作第5世代、春風亭栄助
私が知る新作落語の中で、一番古い時期につくられたのは「猫と金魚」。
一番最近聞いたのは「状況説明窃盗団」と「寿司屋水滸伝」。
前者は、「滑稽の構造」という著書もある漫画家田河水泡の作で、故・桂文治、現・橘家円蔵がナンセンスを散りばめて演じた爆笑作品。
後者二つは春風亭栄助作と柳家喬太郎作の、これまた爆笑作品。
ナンセンスは時代を経て磨きがかかった。
かたやいちいちことこまかな説明を繰り出す泥棒、かたや粋を信条とするはずの寿司職人が破天荒な握りを披露と、強烈なキャラの登場人物が理不尽な言動で客を煙に巻き続ける。
昔に比べ、膨大な物語とセンスが世に溢れるこの時代にあって、今まである作品だけじゃあ物足りなくなるのも道理。
座布団の上に上半身演技のみで小宇宙を描き出す「落語」という話芸スタイルを武器に、現代人に斬り込む笑いをつくる気概あふれる春風亭栄助は、いまだ落語界では二つ目という身分。
この身分を利用して、古典落語に惚れながら自由闊達に作り続ける新作群は常に完成度が高い。
落語の笑いが若者に受けづらい原因はノリツッコミ不足にあるのでは?がテーマの「のりつっこみ指南」、由緒ある寄席の高座で古典落語をやろうか、それとも思いきって新作落語をぶつけてみようか迷いに迷う様子をドキュメンタリータッチで描いた「天使と悪魔」、友達の教師が担当するクラスにはとんでもない生徒がいるらしい「生徒の作文」、ただただ道を教えるというささいなことだけが落語になり、恐くない話で人をいらつかせるというだけで爆笑を誘い、「桃太郎」は「桃太郎DV」に、「大工調べ」は「マザコン調べの序」にという具合に改作にも確かな腕を見せつける。
古典落語の話芸テクニックがきっちり底にあるので聞きやすい。
先日、喬太郎作「寿司屋水滸伝」を演じた栄助の高座はいつにもまして生き生きしていた。同じ志を持つ先輩の心意気を大事に、しかもおのが個性をそこに盛り込むという離れ業をやってのけた。
「落語全集」に追加されるべき作品が次々に増えていく。こりゃ、広辞苑とかの活字媒体では追いつかない。更新が容易なウエブ全集が必要ですね。それでこそ、落語が現代に生きていると言える。
古典落語好きにも落語知らずにも受けたいという栄助の貪欲が、まだまださまざまなベクトルの新作落語を作らせそう。いやはや楽しみ。
●春風亭栄助追っかけ情報●
12/2(日)18:30開演。「寄席 夢月亭」なかの芸能小劇場
12日(水)18:00開演。「新作台本大賞発表落語会」国立劇場演芸場(半蔵門)
27日(木)19:30開演「カフェ落語」イベント・カフェ・アゲイン(武蔵小山)
29日(土)18:00開演「せめ達磨・おっさんトマホーク」キッドアイラックアートホール(明大前)
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